概要
- 時期:2026年10月6日〜8日
- 場所:北海道 南幌町・札幌市・小樽市(張碓・春香)
- 内容:新住協(新木造住宅技術研究協議会)の全国総会研修会。南幌町の住宅地見学、研修会、三五工務店さんの案内で小樽方面の見学バスツアー
はじめに
今年の新住協の全国総会は札幌!ということで、3日間北海道に行ってきました。
南幌町では町・建築家・工務店がタッグを組んでつくっている住宅地「みどり野きた住まいるヴィレッジ」を歩き、小樽方面では基礎工事中の別荘から、敷地の土で塗った土壁の家、宿泊施設を軸にした地域づくりまで。北海道の高断熱住宅の「いま」をたっぷり見てきました。
10月6日|南幌町「みどり野きた住まいるヴィレッジ」をまち歩き
移住の呼び込みに力を入れている南幌町。北海道・南幌町・北海道住宅供給公社と、建築家と地元工務店が組んでつくっている住宅地「みどり野きた住まいるヴィレッジ」。この住宅地づくりに最初から関わってきた建築家・山本亜耕さんの講演を聞いてから、実際に住宅地を歩いてみました。
山本亜耕さんの講演で聞いた話
- ベースは北海道の基準「北方型住宅」。家の配置を千鳥にするなど、町並みのルールがちゃんと決まっている
- 施主さんが建築家と地元の工務店を自由に選べて、設計の途中で関係者がチェックする「デザインレビュー」まである
- 断熱・気密の専門資格(BIS)を持った技術者が設計・施工に関わる
- 「寒さに耐える家」じゃなくて、雪景色や夕焼け、畑、薪仕事みたいな北国の暮らしそのものを設計に取り込もう、という考え方
- 外部収納、土間、軒下、床下暖房。北国ならではの工夫がいっぱい
歩きながら聞いた話
- 雪国あるある:敷地境界ぎりぎりの除雪は、ご近所トラブルのもと
- 南向きの大きな窓も、プライバシーが気になってカーテン閉めっぱなしなら意味がない。寒冷地では、部屋が南を向くかどうかより「風除室とガレージ」の方がずっと大事
- 外壁に厚さ18mmの唐松を使った家も
歩いてみて
住宅地全体で町並みのルールを決めて、建築家と地元の工務店が一緒に家を建てる。こういう住宅地、八戸にもあったらいいのになぁ…と思いながら歩きました。
特に「南向きの窓より、風除室とガレージ」の話は、青森でもまったく同じ。家1棟の性能だけじゃなく、町並みや雪との付き合い方まで一緒に設計する。うらやましい!
10月7日|全国総会研修会
研修会の講演から
新住協代表理事の鎌田紀彦先生の講演は、今年も濃かった!
- 筋交いをやめて、室内側の石膏ボードを耐力面材にする「GWS工法」をもっと広めよう
- 「高断熱=基礎断熱」とは限らない。コストと性能を考えると床断熱も見直すべきで、配管が集まる水回りだけ基礎断熱にする「ハイブリッド」もアリ。床下暖房で基礎断熱にするなら、土間下の全面断熱は必須
- 外張りの付加断熱は、コスパと火災時の安全性からグラスウールがおすすめ。発泡スチロール系の外張りは「決してやってはいけない」
- 屋根断熱は、厚い合板を登り梁に直接打つ「野地板一重」でコストダウン
武部建設さんの事例紹介も刺激的でした。
- 新事務所では、地域の粘土を使った土壁と木質系断熱材の組み合わせ、地中熱ヒートポンプの輻射冷暖房に挑戦中
- CLTパネルでつくったQ1住宅レベル3の住宅や、築20年の家をフルリノベしてC値0.3まで持っていった事例も
翌日の小樽でも土壁の家を見ることになり、「伝統技術×高断熱」はこれから来るな、と感じました。
グループディスカッション
午後は、席ごとに分かれてのグループディスカッション。同じテーブルには工務店さん、設計者さんだけじゃなく、換気メーカーさんやサッシ屋さんも。作る側と売る側が混ざって、現場のリアルな話をしてきました。
こんな話題で盛り上がりました。
- 基礎断熱にするか、床断熱にするか(評価方法が変わったこと、寒冷地の配管凍結リスク)
- 付加断熱や屋根断熱の納まり
- 熱交換換気と第三種換気。一次エネルギー計算では熱交換換気が不利になる逆転現象と、実際のメンテナンスの話
- UA値0.2を切るのはやっぱり大変。地域ごとの標準仕様づくりが大事
- BELSや補助金など、制度への対応
10月8日|小樽方面の見学バスツアー(案内:三五工務店さん)
案内してくれたのは三五工務店さん。とにかく会長が熱い!バスの移動中、ず~~~っとカンペなしで話しっぱなしでしたw 家づくりの話だけじゃなく、地域のこと、商売のこと、これからの工務店のあり方まで、想いがあふれてました。
A|海を望む別荘、基礎工事中(小樽市 張碓)
海外のオーナーさんが冬のスキー滞在用に建てる別荘。基礎ができあがった段階を見せてもらいました。
- 一番の要望は「海の眺め」。2階にリビング、ガレージの上に寝室。どこからでも海が見えるように
- 断熱:天井395mm、壁105mm+フェノールフォーム30mm、基礎75mm。UA値0.34
- 換気:第三種換気(各階1台)
- 基礎断熱は外周から900mm。床下を暖める方式なので、今後は土間下全面の断熱も検討中とのこと
- シロアリ対策で、基礎外側の断熱材にメッシュを貼って左官で固める
- 外壁は道南杉。道産材が標準で、住宅街で浮かないデザインに
- 斜面なので、外壁の下端は地盤に沿って斜めに切り下げ。真っすぐ揃えなくてもいいんだ!とちょっと衝撃でした
- 冬も工事は止めない。足場をシートで囲って中を暖める「採暖養生」で、基礎だって打つ。冬の追加費用は夏の工事とならして、どの季節に建てても同じ金額にしているそう。お客さん思い!
- 海が近いおかげで冬でも−10℃くらいまでしか下がらない。ただし山側は2m近く積もることも
B|森の中のワインショップ(飛び入り見学)
予定になかったけど、自然派ワインを扱うお店の建物をサクッと見せてもらえました。ラッキー。荒々しい塗り壁と、林を残した敷地がいい感じ。
C|敷地の土で塗った土壁の家(施工中)
延床115坪の大きな住宅。屋根はシート防水、外壁は道南杉、熱源はガスの床暖房。
- 室内の壁は、基礎工事で掘った敷地の土を使った土壁。材料は土・藁・砂・海藻だけの完全無添加で、この家だけで約500kgの土を使っているそう
- 土壁は湿気を吸ったり吐いたりできて、蓄熱もする。剥がして水で練り直せば何度でも使える。究極のリサイクル建材です
- 塗ったのは浦河町を拠点にする左官職人さん。西日本で文化財の土壁を修業してきた方。一番の課題は「直せる職人がいなくなってきていること」だそう
- 杭なしの直接基礎。掘ったら出てきた石を、そのまま外構のデザインに使っている
- 外壁塗装はシラデコール。北海道は空気が乾いていて苔が出にくいので、無塗装もアリ
- R(曲線)に曲げた水切りなど、細かいところの仕事がとにかく丁寧。正直、変態的(ほめ言葉)
昔ながらの土壁を、いまの高断熱住宅の中で本気でやっている。三五工務店さんのこの取り組みには、本当に感銘を受けました。
D|山郷 SANGO(小樽市 春香町)
三五工務店さんが運営する、ヴィラとカフェ・レストランなどの複合施設。2023年にヴィラ2棟で試しに始めて、手応えを確かめてから増やし、2025年にグランドオープン。
- お昼ごはんの前に、会長からお話。ここ春香山は、札幌北インターまで10分ほど、小樽へも20分ほど。歩いてすぐのスキー場からは海が見えて、海と山の両方がそろった場所です
- ヴィラは、会長の息子さんである3代目の社長が始めたもの
- 建築屋は、建てたらそこで終わり。あとはリフォームくらい。でも宿に泊まってもらえば、それが次の仕事につながる。会長の言葉に、なるほど!と思いました
- 泊まること自体がモデルハウス体験になっていて、泊まった人から「同じものを建ててほしい」と依頼が来るんだとか
- 工務店業から、ヴィラ、カフェ・レストランなどの飲食へと事業を広げて、地域づくりと宿泊で次の仕事を生んでいる。民泊を準備中の身としても、めちゃくちゃ刺激になりました
まとめ
3日間で一番感じたのは、断熱・気密の性能はもう「できて当たり前」で、その先の「この土地でどう暮らすか」を設計する段階に来ている、ということ。
- 寒冷地では、部屋の向きより、風除室・ガレージ・外部収納が暮らしを決める
- 土壁のような伝統技術を、いまの高断熱住宅と組み合わせる
- 工務店が宿や地域づくりまで手がけて、次の仕事につなげていく
家工房の設計でも、数字の先にある暮らしの話を、もっとお客さんとしていきたいと思います。手がけている蔵サウナの改修にも、土壁の話がさっそく効いてきそうです!